親の介護が現実問題として迫ってきたとき、「施設入所」という選択肢も出てきます。しかし、いざ調べてみると、特養・老健・有料老人ホーム・グループホームなど多くの種類があり、どれを選べばいいのか分からないという声が非常に多く聞かれます。
ここでは、7種類の介護施設それぞれの特徴や費用感、入所条件などについて説明していきます。
1.特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホームの入居条件は、常時介護を必要とし自宅での生活が困難であることで、入居の申し込みは原則として要介護3以上となっています。待機者が多く、入居までに数年を要することも多くありますが、食費や居住費は所得に応じているため、他と比べると費用が安いです。
特養ホームの特徴
- 特徴:要介護3以上の高齢者が対象。公的施設で費用が比較的安い。
- 目的:長期入所による生活介護支援(食事・入浴・排泄など)。
- メリット:費用負担が軽い。介護スタッフが常駐。
- デメリット:人気が高く、入所待ちが発生しやすい。
介護スタッフが常勤していることから、寝たきりになっても安心して生活できます。ただし、看護師は日中しかいおらず、また医師も常勤ではないため連携病院から往診してもらうケースが多いようです。
2.介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設とは要介護者が利用できる施設で、リハビリをして自宅復帰を目指すための施設です。
たとえば、骨折して入院した方について考えてみましょう。治療が終わり退院したが、入院中に落ちた体力や筋力を整えるために、月単位でリハビリを続ける、最終的に自宅に戻ることを目的としています。
老健の特徴
- 特徴:要介護1以上の方が対象。病院退院後などに一定期間入所してリハビリを受ける。
- 目的:在宅復帰を目指した中間施設。
- メリット:医療ケアやリハビリが充実。医師常駐。
- デメリット:原則3~6か月の短期入所。長期利用には不向き。
施設内には医師、看護師、リハビリ専門スタッフ、介護士などが常勤しており、医療面において安心感があります。
3.有料老人ホーム
有料老人ホームという名称の施設は、【介護保険法の特定施設入居者生活介護における有料老人ホーム】のほか、【介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム】などがあります。それぞれの違いについて整理しておきましょう。
特定施設入居者生活介護における有料老人ホーム
「特定施設入居者生活介護における有料老人ホーム」の入居条件は要支援1以上です。
- 介助を要する場合は施設の介護職員が行う
- 寝たきりになったとしても食事や入浴など生活における介護を受けられる
- 医療的な処置や健康管理は施設にいる看護師が行う
入居金や居住費が高額であるため、ある程度の資産がなければ入居が困難だとされています。
介護付き有料老人ホーム・住宅型有料老人ホームなど
介護付き有料老人ホーム・住宅型有料老人ホームとは、「高齢者向け賃貸マンション」のようなもので、次のような特徴があります。
- 食事の提供がある
- 共用の風呂を使う
- 介護や家事支援が必要な場合は介助サービスなどを別途利用する
自宅と同じような環境下で暮らすことができます。自宅との違いは、職員が待機しており安心感があるという点が挙げられるでしょう。
4.養護老人ホーム
養護老人ホームとは、家庭環境や経済的な事情などにより自宅での生活が困難な高齢者のための公的な入所施設です。要介護認定がなくても、介護が不要な高齢者でも入居できる点が特徴です。
入居条件
- 原則として65歳以上
- 独居で見守る家族がいないなどの理由により在宅での生活が困難な人
- 経済的な理由により生活が困難な人(生活保護受給中など)
- 原則として要介護認定を受けていない人
養護老人ホームの特徴
- 食事の提供がある
- 生活相談・生活支援を受けられる
- 見守り・安否確認をしてもらえる
- 軽度の介助がある(※本格的な介護サービスは提供されません)
入所を希望する場合は、まずは自治体の福祉窓口に相談することから始めましょう。
5.サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは、主に自立または軽度の介護が必要な高齢者向けに提供される賃貸住宅のことをいいます。国の登録制度に基づいて整備された施設で、安否確認や生活相談などのサービスを受けることができます。
入居条件
原則として60歳以上であること・自立~要介護程度の高齢者であることが入居条件になっています。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の特徴
- 特徴:高齢者向けの賃貸住宅で、見守り・生活相談が付く。
- 目的:比較的元気な高齢者向けの自由度が高い住まい。
- メリット:自立した生活が可能。バリアフリー設計。
- デメリット:介護サービスは別契約が必要。
自立して生活できるが見守りや相談の支援があると安心な方、一人暮らしが不安な高齢者などに向いているでしょう。
6.グループホーム
グループホームとは、認知症の高齢者が少人数で共同生活を送りながら、専門スタッフの支援を受ける施設です。正式には「認知症対応型共同生活介護」といい、家庭的な環境の中で安心して暮らせることを目的としています。
入居条件
以下すべてに該当する人が対象です。
- 要支援2または要介護1以上の認定を受けている
- 認知症の診断を受けている
- 原則として同一市区町村に住所がある
- 少人数の共同生活に支障がない
グループホームの特徴
- 特徴:認知症高齢者が少人数で共同生活する施設。
- 目的:家庭的な雰囲気の中で認知症ケアを提供。
- メリット:認知症に特化したケアが受けられる。
- デメリット:要支援2または要介護1以上で、かつ地域制限あり。
少人数で協力し合って日常生活を送るため、入居者にはそれぞれ家事等の役割が与えられることがあります。これによって入居者の自尊心が保たれ、認知症の症状進行を抑えやすいといわれています。
7.軽費老人ホーム(ケアハウス)
軽費老人ホームは「特定施設入居者生活介護」という分類の施設になります。60歳以上で低所得高齢者のための施設で、「一般型」と「介護型」があり、状態に応じて、常勤している介護職員が必要な支援を行います。
軽費老人ホーム(ケアハウス)の特徴
- 特徴:自立・要支援の高齢者向け。食事や生活支援を受けながら暮らせる。
- メリット:費用が比較的安い。公的支援あり。
- デメリット:要介護度が高い場合は対応できない。
一般型ケアハウスの特徴
- まだ介護が必要ではない、または軽度の介護が必要な方が対象
- 公的施設で、入居費用が比較的安価
- 必要な介護サービスは、外部の事業所(訪問介護など)と契約して個別に利用
- 生活支援(食事、安否確認、生活相談)は施設が行う
介護型ケアハウスの特徴
- 要介護1~5の認定を受けている方が対象
- 施設内に介護スタッフが常駐し、日常的な介護を提供
- 一般型に比べて介護サービスが手厚いぶん、費用は高め
- 利用者は施設サービス計画(ケアプラン)に基づいた支援を受ける
介護施設選びのポイント
介護施設選びでは、次のようなポイントを押さえておくと、本人に合った施設を選ぶことができ、また後のトラブルも回避できる可能性が高くなります。
親の要介護度について
要介護度が高いほど、特養や老健などの選択肢が適しています。
入居目的について
短期のリハビリ目的か、終の棲家としてか、親本人の環境や心情も汲んで判断しましょう。
家族の支援体制について
近くに住んでいるか、施設に通えるかで、選ぶべき施設が絞られてきます。
費用負担について
入居一時金や月額費用をしっかり確認し、親にとって金銭的に無理のかからない施設を選ぶことが大切です。
まとめ
介護施設にはそれぞれ特色があり、親の健康状態・性格・家庭状況によって適切な施設は異なります。まずは情報を整理し、可能であれば複数の施設を見学・比較しておきましょう。また、できるだけケアマネジャーや地域包括支援センターを活用し、本人や家族の状況に応じたアドバイスが受けながら施設を選んでいきましょう。









