身寄りのないおひとりさまのなかには、「自分は身寄りがないし、どうせなら社会貢献として献体に役立てて欲しい」と希望する方もおられます。ただし、献体は大学等に対する事前登録が必要であるため、「死後は献体を希望する」と遺言書に記載したとしても、そのまま実現することはできません。
ここでは、身寄りのないおひとりさまが献体するための流れと、手続きに欠かせない生前対策について説明していきます。
献体を行う目的とは
献体を行う目的は、大きく分けて「医学教育への貢献」と「医療研究の発展」の2つにあります。
【1】医学教育への貢献
献体は、医学生や若手医師が人体の構造を直接学ぶために不可欠なものです。解剖学の授業や外科的手技の実習において、実際の人体を扱うことで、教科書や模型では得られないリアルな理解を深めることができます。これにより、将来の医療現場で患者に安全で確実な医療を提供するための基盤が築かれます。
【2】医療研究の発展
新しい治療法や手術方法の開発、医療機器の検証においても献体が重要な役割を果たします。献体による実証的な研究が進むことで、難病や外科的治療の精度が向上し、多くの患者が恩恵を受けることにつながります。
身寄りのない「おひとりさま」にとっての献体
また、献体は「生きた証を社会に残す行為」としての意義も持っています。身寄りのないおひとりさまにとっても、自らの身体を未来の医学や人々の健康のために役立てられることは、大きな生きがいと安心に繋がるでしょう。
【おひとりさま】献体後の遺体の取扱い
一般的に、献体後の遺体は医療機関側で火葬されます。ここでは、献体を受けたおひとりさまの遺体の扱いについて説明していきます。
献体後のおひとりさまの遺体はどう扱われるのか
献体された遺体は医学部や大学病院に引き取られ、厳格な管理のもとで教育・研究などに活かされます。
遺体の保存処理
遺体には防腐処理や保存処理が行われ、医学教育や研究に適した状態に整えられます。
教育・研究に係る遺体活用
その後、医学生の解剖学実習や医師による外科的トレーニング、新しい医療技術の検証などに使用されます。使用期間は大学や研究機関によって異なりますが、数か月から数年にわたり活用されることがあります。
遺骨返還または合同墓などでの供養
役目を終えた後、遺体は火葬・埋葬されます。遺骨は献体を申し込んだ際の希望に沿って返還される場合と、大学が合同墓地に納骨・永代供養する場合があるようです。
おひとりさまのための「献体の登録手続き」
献体を希望する場合、あらかじめ所定の手続きを行う必要があります。献体は生前の意思表示だけではなく、実際に受け入れる大学や遺族との調整が不可欠です。
以下の流れを理解したうえで、入念な生前準備を行いましょう。
【1】本人または遺族、身元保証人による同意を得る
献体は本人の強い意思にもとづくことが大前提ですが、それだけで完結するものではありません。多くの大学では、実際に遺体を搬送したり葬送に関わったりするため、遺族の同意が必要とされています。
遺族がいない「おひとりさま」の場合は、身元保証人の同意を得るケースもみられます。同意がない場合、遺体の受け入れが難しくなるため、死後事務委任契約や身元保証契約を活用し、早めに明確な意思表示をしておくことが重要です。
【2】大学などに対して献体登録を行う
献体登録は、本人が元気なうちに、北海道の献体登録団体である「白菊会」に問い合わせ、献体を受け付けている医科大学・歯科大学などに登録を行います。
【北海道で献体を受け付けている医療機関(医科大学など)】
- 北海道大学
- 札幌医科大学
- 北海道医療大学
- 旭川医科大学
なお、生前に本人の意思にもとづく献体登録がされていたとしても、死後、原則として遺族による同意がなければ、実際に献体を実行に移すことができません。
おひとりさまの場合は、献体登録を行う前に、大学等に「身寄りがない場合は誰の同意が必要になるのか」をきちんと確認しておくことが大切です。
【3】献体登録証の交付を受ける
献体登録が受理されると、大学から登録証が交付されます。これは本人の献体の意思を明確に記録した証明書であり、死後に大学へスムーズに連絡できる体制を支える大切な書類です。遺族や身元保証人もコピーを持っておくと、実際の連絡・搬送手続きが滞りなく進みます。
おひとりさまが注意したい献体のポイント
身寄りのない方が献体を検討している場合、次の事柄に注意して準備を進めましょう。
死後の連絡体制を整えること
身寄りがないと、死後、大学と連絡を取り合ったり故人の意思表示を確認できる人がいなかったりするため、身元保証サービスや死後事務委任契約を利用して備えておきましょう。
身元保証契約や死後事務委任契約で意思を残すこと
書面で「献体希望」の旨を明示しておかないと、周囲に伝わらず実現できない可能性があります。
終末期医療と献体の両方に関する意思表示をしておくこと
献体だけでなく、延命治療や介護方針といった終末期医療に関しても、同時に書面化しておきましょう。
【死後の献体】死後事務委任契約や身元保証契約は必要か
献体の登録を受けた大学側は、実際にその意思を実行する前に必ず遺族の同意を確認します。身寄りのないおひとりさまの場合は、身元保証人や死後事務委任契約の受任者が同意を表明することになるかもしれません。
札幌医科大学白菊会の例
たとえば、札幌医科大学白菊会では、「身寄りのない者はどうしたらいいか」との質問に対し、「死後の世話をお願いすることになると思われる人に依頼する」と回答しています。
大学によって対応が変わってくることが予想されますが、身元保証人による故人の意思確認を求められる可能性や、死後事務委任契約の受任者による同意確認と遺体引き渡しの可能性が考えられそうです。
詳しくは、献体を扱う各大学に問い合わせて確認しましょう。
【1】死後事務委任契約が必要とされる理由
おひとりさまの場合でも、本人が生前に献体登録を済ませておけば、死後事務委任契約の受任者が代わりに大学へ連絡し、搬送や手続きを行うことが可能です。ただし、死後事務委任契約の文面に「献体に関する事務」を明記しておくことが重要です。
死後事務委任契約
本人の死後に発生する事務(葬儀、火葬、納骨、医療費や公共料金の精算、献体連絡など)を第三者に委任するための契約です。
死後事務委任契約が必要な理由
大学にとっては、献体登録者の死後すぐ連絡してくれる人が必要です。身寄りがない場合は、そのような場面に備えて、行政書士などと死後事務委任契約を結んでおけば安心です。
【2】身元保証契約が必要とされる理由
身寄りがないおひとりさまが亡くなった場合、身元保証人が大学への連絡や大学への遺体搬送など重要な役割を果たします。ただし、身元保証人は、本人の意思を代わりに実行する存在であり、勝手に献体を決めたり撤回したりすることはできません。あくまでも本人が生前に自分の意思で献体登録を行っていることが前提です。
身元保証契約
本人の生前の入院・介護施設入居などに際し、保証人としてサインをしたり、緊急時の対応をしてもらったりするための契約です。
身元保証契約の必要な理由
おひとりさまの場合、大学によっては「死後の連絡者」として身元保証人を求めるケースがあります。つまり、施設入居や入院時に必要とされる身元保証契約が、献体においても「死後の責任を担う人」として利用される場合があるようです。
【3】 おひとりさまだからこそ注意すべき点
死後事務委任契約の受任者も身元保証契約による身元保証人も、いずれも献体手続きの際に重要となる存在だといえそうです。しかし、各契約にはそれぞれ特徴があり、どちらか片方だけでは不十分であるため、身元保証契約と死後事務委任契約を組み合わせることで、初めて安心して献体希望を実現できるでしょう。
■献体を確実に実現するためには死後事務委任契約が不可欠
■施設入居や入院に対応するためには身元保証契約が不可欠
両方の契約をどう組み合わせるかが、おひとりさまにとって重要な終活課題となってきそうです。
まとめ
おひとりさまでも献体は十分可能ですが、「死後に誰が大学へ連絡するのか」を明確にしておくことが最大のポイントです。身元保証契約または死後事務委任契約と組み合わせておくことで、身寄りがなくても意思を確実に実現できます。
弊社では、身元保証契約および死後事務委任契約、または両方の活用について知識と経験を有しています。おひとりさまで、献体を行うためにはどのような対策を採っておけばいいかお悩みの方などは、初回無料相談をご利用のうえ、ぜひ弊社までお問い合わせください。









