身元保証人が行う家財処分と遺品整理

身寄りのいない方が施設や病院で亡くなった場合、施設や病院内、本人の自宅にある家財道具の処分に困ることがあります。

 

仮に、亡くなった方が身元保証人に対して、「家財道具は全部、処分してかまわない」と生前伝えていたとしても、身元保証人としては、他人の所有物を勝手に捨てるということは法的に制限があり、専門の業者に依頼したり、必要な手続きを取るのも、相続人の承諾がないとできないのが原則です。

 

身寄りのいない方が亡くなった時、遺品の処分権限は相続人にあります。身元保証人だから何でもできるということではありません。なお、相続人が全くいない場合は、家庭裁判所に相続財産管財人選任の手続きを取り、相続財産管理人の権限で家財道具の処分などをすることになります。申立ては利害関係者であればできますので、身元保証人も利害関係者となるでしょう。しかし、相続財産管財人の選任の申し立てはとても面倒です。まず、申し立てに必要な書類だけでも、多数ある上に亡くなった方の出生から死亡までの戸籍や財産を証する資料などの添付が必要になります。これらの書類を集めるのは素人にはとても大変な作業で通常は士業事務所に依頼することになるでしょう。

 

このように、身元保証人ができる仕事の範囲が制限されているので、本人としては、身元保証人にこれらのこともできるように、その権限を前もって与えておくことが必要です。解決策としては、本人と身元保証人との間で、身元保証契約とは別に死後事務委任契約をしておき、死後の遺品整理や家財処分の権限も与えておくのがよいでしょう。また、本人の死亡後の家財は、その所有権が相続人に移るのが法律の定めですので、本人に遺言書を作成してもらい、それらの家財も死後事務受任者や遺言執行者において処分可能である旨の取り決めをしておくべきです。

 

施設や病院職員、賃貸家屋のオーナーに迷惑を掛けないために

身元保証人が本人との間で死後事務委任契約を締結していなかったり、本人が遺言書を作成していない場合、亡くなった本人の所有物の権利が相続人に移るため、相続人ではない身元保証人でも手を出せないという事態に陥り、施設・病院、亡くなった方が契約していた賃貸物件のオーナーに迷惑を掛けてしまうこともあります。(通常は、身元保証人や連帯保証人が残置物の撤去義務も負っています。)

 

身元保証人がいればすべての問題解決とはならないため、死後事務委任契約や遺言書の作成によって、施設・病院・賃貸物件のオーナー側に、しっかりとした権限に基いて家財処分や遺品整理を行うということを説明できれば、より安心感を与えることができます。

 

施設によっては本人との入居契約時に、本人死亡時における遺品整理について取り決めをしていることもあります。しかし、施設側も勝手に本人の所有物を処分して、後になって相続人から何等かの法的請求を受けないか不安になるケースもあります。この場合においても、身元保証人のみならず、死後事務受任者・遺言執行者の存在が安心感を与えることになります。

 

本人死亡後の家財処分の費用負担は

施設の居室を一部屋、遺品整理業者が処分する相場はだいたい10万円前後です。仮に10万円で見積もったとしても、家電リサイクル品が発生するなど、処分に意外と経費がかかることがあり、当初の予算をオーバーしたりすることもあります。死後、本人の財産から支払いをしてもらえたら良いのですが、そう簡単にいかないこともあるでしょう。施設の預かり現金で足りないこともあります。

 

施設側はいったん家財処分費用を立て替え、身元保証人に改めて請求することもあります。このようなことからも、身元保証人の存在は非常に重要であると言えます。身元保証人がいることによって施設側も安心して入居者に部屋を貸すことができます。身元保証人側は、本人の資産で遺品整理費や家財処分費が賄えるか、身元保証契約時に確認する必要もあるでしょう。

 

本人の資産を確認しておけば、本人の資産で賄えないオーバー分を身元保証人が自己の資産で払うということを避けることができます。(身元保証人が自己の資産で遺品整理費・家財処分費を支払い、相続人に対し改めてその分を請求することもできますが、相続人が相続放棄をしてしまうと、身元保証人による自己負担となってしまいます。)

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