身元保証人が将来関与する相続手続きの流れ
身元保証人は、本人の死亡後に本人の相続人へ財産の引継ぎ事務などを行うこともあります。また、身元保証人が本人の遺言執行者を兼務して、身元保証人が手続きを行うこともあります。以下、相続手続きの流れを身元保証人も頭に入れておくとよいでしょう。
① 相続人の確認
被相続人(亡くなった方)の法定相続人が誰なのか?ということを、本人からのヒアリングのみならず、実際に被相続人の生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍を取得して確認することが必要です。実際の相続手続きにこの戸籍謄本が必要になります。身元保証人が被相続人の財産を管理していた場合、この相続人の確認に基づき、預かっている財産の引継ぎを行うことになります。
② 相続財産の調査
預貯金や株式、不動産などのプラスの財産の他、借金などのマイナスの財産も調査します。身元保証人が本人の遺言によって遺言執行者に選任されていた場合は、遺言執行者の権限に基づき相続財産の調査を行うことができます。
③ 相続方法の確認と財産引き渡し
身元保証人は①の相続人の確認の後、相続人に対して相続方法の仕方を確認することになります。相続をするのか(単純承認や限定承認)、相続を放棄するのかなどを確認します。相続人が複数いる場合は、身元保証人が預かっている相続財産をだれにどのように引き渡すか、相続人より遺産分割協議書をもらうなどして、引き渡しにおいてのトラブルがないようにします。遺産分割協議書を相続人より提出してもらう際は、書類へは実印捺印、印鑑証明書の写しなども提供してもらうのがよいです。
④ 相続財産の名義変更など
身元保証人が遺言執行者に定められている場合は、遺言執行者として相続財産の名義変更事務や預貯金の解約処理なども行います。
⑤ 相続税の申告
相続財産が多額(基礎控除3000万円+相続人の数×600万円)で相続税の申告が必要な場合があります。相続税申告は、亡くなった日から10か月という期限があるので注意が必要です。身元保証人としても、このように期限がある場合、相続人へ速やかにその必要があることなどを連絡すべきでしょう。
身元保証人は相続開始前でも相続人の確認をすべき
身寄りがいないという方の中には、親族はいるが疎遠になっているだけ、何等かの理由で連絡を取らないでいるだけというケースもあります。親族や相続人がいないと思い、第三者が身元保証人として契約して、その後に(本人死亡後含む)親族や相続人が現れてトラブルになることもあります。
第三者が本人の身元保証をお受けする際には、そういった理由から、相続人がいないか確認する必要があります。相続人の確認や調査をした上で、相続人がいた場合は身元保証の契約前にその方々に対して、自分が身元保証人になる旨の説明も場合によっては必要になるでしょう。
身元保証人は本人の財産調査をすべき
身元保証人は連帯保証人の役割を担います。身元保証人は、本人が入院費や施設の利用料を滞納した場合、その滞納分を支払う義務があります。時には本人の損害賠償責任を身元保証人が負担する事も起きるかもしれません。
また、身元保証人は、本人死亡後の葬送に関する費用や遺品の処分費用なども事実上責任を負うこともあります。
本人の財産がどの程度あるか不明のままでは、身元保証人として不安でなりません。本人の資産でそれらの負担を賄うことができるのか、事前の本人からの聞き取りや本人が財産の状況を把握してない場合に、財産の調査も必要になるでしょう。
当社では、本人の身元保証をお引き受けする際に、事前審査をさせていただき、だれが本人の相続人になるのか、本人の資産で各種支払いの担保ができるのかなどを確認しております。これは、当社以外の方が身元保証人を引き受ける際にも必要になると思います。
以上のように、相続と身元保証の関係は密接です。終活をされている方、身元保証を検討されている方はご参考にしていただけたらと思います。